小松で370年。北陸のお茶文化を作り上げた老舗・長保屋茶舗

2023年夏号

 初代長谷部利右衛門(はせべりえもん)から、先祖代々370年。12代にわたって受け継がれてきたお茶屋が、小松市にある。香ばしいお茶のかおりに誘われて、こまつ町家の暖簾をくぐってみよう。町とともに生きる老舗の歴史とこれからを、長保屋茶舗12代目当主・長谷部英夫さん、そして13代目・長谷部英嗣さんに伺った。

こまつ町家が並ぶ龍助町で、370年続く老舗

 小松駅の南側、大通りから脇道を入ると、美しい町家が建ち並ぶ静かな通りが現れる。南北に伸びる登り竜のような形をしたエリアだ。「こまつ町家」のしつらえで老舗商店が並ぶこの通りは、かつて醤油屋を営んでいた和泉屋龍助の功績からその名を冠し「龍助町」と名付けられた。小松の中でもひときわ歴史的風情を味わえる龍助町は観光的価値も見出され、2022年5月には無電柱化工事が完了。ひらけた空と町家の格子によく似合う、ガス灯風の街灯も備えられた。

 そんな龍助町を代表する老舗が、長保屋茶舗だ。暖簾をくぐり、木枠のガラス戸を開けると、香ばしいお茶のかおりが漂う。親しみのある、棒茶の香りだ。

 「ようこそ、ようこそ」と出迎えてくれたのが、長保屋茶舗12代目当主の長谷部英夫さんだ。店の奥、「利右衛門庵」の看板が掲げられた応接スペースでお話を伺う。

 「実は、私は次男なんです。兄がいるのですが、兄は商売人気質ではなく学問に長けていましたので、教師になりました。私は小さい頃から家の工場が遊び場だったもので、自然と跡継ぎは自分なんだと思っていましたね。まあ、そんなこんなでほそぼそとお茶屋さんをやっております」(英夫さん)

 穏やかで謙虚な語り口に、人望の厚さが伺える。英夫さんは、町内会長として長年にわたって龍助町を支えている存在でもある。利右衛門庵はギャラリーや町内会の会合場所としても使っているそうだ。

 この日、英夫さんの長男・英嗣さんも並んで出迎えてくれた。英嗣さんは長らく小松を離れていたが、今年1月から家業を手伝い始めたという。いずれ13代目となる、次期当主だ。

 「いずれは家業を継ぐつもりではいましたが、まずは別の仕事をやってみようと。15年ほど姫路にいました。30歳ぐらいで帰ってこようと思いつつ、コロナの流行もあり、35でようやく見習いから始めることにしました」(英嗣さん)

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